Department of Mechanical Engineering, Nara National College of Technology, 国立奈良高専 機械工学科

奈良工業高等専門学校

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不定期シンガポールだより No.1 (June/29/2010)

機械工学科 谷口 幸典
 

お世話になっているシンガポール生産技術研究所の紹介

 
 SIMTech (Singapore Institute of Manufacturing Technology) は生産技術に特化した研究所で,2つのビルがNTU (Nanyang Technological University) の敷地内にあります. 私はForming Technology Groupに所属しており, 研究テーマはMicro-Forming技術についてです. 簡単に説明すると,既存の塑性加工を徐々にミクロ化していったときにどのような問題が出てくるのかについて,実験的に確かめる方法について調査検討しています.
 ものづくりといっても分野は様々,いろいろな工作機械が実験室にあります. 政府がものづくり技術向上に力を入れており, 近年の良好な経済成長もあって,研究資金は潤沢であると言えます. 推進すべき課題は環境問題への対応と上記のような微細加工への挑戦が多く, 必要な計測・評価装置はほぼそろっているように感じます. 現在,私は三次元表面粗さ計を使って,加工に伴う粗さの変化を詳細に調べています.
 勤務している研究者(博士号),および技術者(修士・学部卒)は 先端技術の研究プロジェクトもしくは企業との共同研究を積極的に立ち上げ, 政府へ予算申請します. プロジェクトへの関与度は全て管理され, 仕事量が給料に多少なりとも反映される仕組みなので, 皆さんやりがいを持って仕事をしているように見えます.
 

生活について

 
 SIMTechは人材育成も担っており, 国内外の大学の機械工学系,修士課程の学生を随時受け入れて数カ月間の実地訓練を行っています. 私はその住まいとして専用に提供されている公団住宅に住まわせてもらっています. フロアの間取りは,20畳ほどのリビングルームとキッチン, それから3つのベッドルーム(ツイン+シングル)です. イギリスからSIMTechに研修に来ている学生と共同生活していますが, 学生時代の寮生活の経験がすごく活きてきます. 自分の部屋にはクーラーがないのですが, こちらは奈良の夏の夜のように蒸し暑いことはほとんどなく, 寝苦しい夜はたまにしかありません. なおシンガポーリアンはそのほぼ全てがこのような基準化された団地で生活しており, 高層団地が所狭しと並んでいる風景が特徴的です.
 食事は昼,夜とも大学内の学生食堂で食べられます. 食堂は幾つもあり, また多民族国家であることから一つの食堂内に様々な国の料理があり, どこの食堂へ行って何を食べようかいつも迷います. 一食あたり大体3〜4S$(\300以下)で食べられ,非常に助かります.
 通勤はMRTと呼ばれる電車とバスで通っています.交通費も安く,往復でも\300程度で済みます.大体30分程度で着く距離です.

MRT

SIMTechの研究棟

SIMTechの実験棟

食堂の例.いろんな国の料理があります

不定期シンガポールだより No.2 (Aug/18/2010)

 

ユース五輪のアスリート達を見て

 
 日本では報道が少ないようですが,初めてとなる夏季ユース五輪 (Youth Olympic Games) が8/14から行われています. Nanyang大学は選手村を提供しており, 世界各国の若いアスリートが一堂に会しています. 本大会は単に若い年代による「プレ五輪」というよりも交流と育成の機会であることが強 調されており, 様々な育成プログラムがあるそうです. その講師を各国の著名なスポーツ選手が務めており, 日本からは唯一,テニスの杉山愛さんが模範選手として選出されています. 毎日新聞の取材で杉山さんの談話*が掲載されていて, 説得力のある言葉に感銘を受けました. 先日,選手村へと帰る日本代表選手とすれ違いましたが, 高専生よりも少し下の年代で特に特別なわけでもなく, ごく普通の生徒さんたちでした. そのせいか,彼・彼女らが世界との交流の機会を得ていることの価値がより伝わってくる 印象でした. さて,ちょっと強引に関連付けると, 高専生は研究者・エンジニアのユースと言えます.
認知度ではマイナーな教育機関かもしれませんが, 高専生には他では出会えない独特な努力の場 (e.g., 実験実習や卒業研究など), および,交流の場 (e.g., 各種大会・学会発表や先生の手伝いなど) が提供されている (強いられている?)と思います. 長いようで短いユース時代を大切な思い出にするためにも, 何でもよいので一貫して取り組めるものを自身で見つける必要があります. 挑戦する意欲が重要であり, 重ねた努力はさらなる交流の機会をもたらすのではないでしょうか. ユース五輪を通じて,そんなことを感じています.

*毎日jp, http://mainichi.jp/enta/sports/general/ news/20100811ddm035050112000c.html, 2010年8月16日閲覧

不定期シンガポールだより No.3 (Sep/9/2010)

 

写真集

 
 今回はシンガポールの風景写真をいただきました.

川沿いのオフィス街


オーチャードから望む巨大建造物


オーチャード通り

ユースオリンピックの看板


巨大建造物からの風景


巨大建造物の模型

不定期シンガポールだより No.4 (Jan/4/2011)

 

専攻科生のシンガポール国際交流

 
 二カ月ほど前の話になってしまいますが, 去る11月7日,奈良高専の国際交流事業として専攻科生4名が訪れることとなり, 久しぶりに学生と接することができました. 二泊4日 (帰りは機中泊) という短い訪問期間でしたが, 研究発表とディスカッションの機会を SIMTech および Nanyang Technological University (NTU) に設けていただき,加えて, Seiko Instruments Singapore Pte. Ltd. の工場見学も行うことができました.
 インドネシアにおける火山灰の影響か,一時間以上到着が遅れ, ホテルへのチェックイン時点で22時を過ぎていましたが, 折角の滞在ですので繁華街へとMRTで移動し, タイ料理のレストランで遅いディナーをとりました. 皆お腹がすいていたのか, 結構な値のする料理を辛いだのすっぱいだの言いながらあっという間に平らげてしまいました. ちゃんと味を覚えているのでしょうか...?
 翌月曜日は終日研究交流の日. 午前中はSIMTechにおいてプレゼン, 午後はNTUの生産加工系研究室との合同発表会&施設見学です. 用意したメモを用いながらのプレゼンではありましたが, 4人とも不可の無い出来栄えで, 参加いただいたSIMTechスタッフおよびNTUの博士課程学生の方々から様々な質問をいただくことができました. 残念なことは,その質問に対する対応がほとんどできなかったことでしょう. 英語での質問について英語で答えることは, 頭ではわかっていても言葉にするのに時間が必要であり, 折角いただいたコメントに対して無言になってしまう場面が多くありました. これについては場数を踏むしかないでしょうし, もちろん我々教員も効果的な指導方法を考えていかなくてはなりません. NTUではナノテクノロジーなど先方の高度な研究内容に圧倒されていたようで, 一言も質問できなかったのも残念です. 高度であっても,その原理は基礎知識のすぐ上に存在しています. 専攻科生であれば必ず一度は授業で聞いたことがある知識,原理もあったはず. それについて興味が生まれなかったはずがありません. 「旅の恥は掻き捨て」とは悪い意味で用いますが,現時点の自分が英会話が苦手でも, 研究内容が最先端 (トレンド) でなくても,物怖じせずに交流すればいいのです. 「恥」を掻いたと認識できた時点でそれは「恥」ではなく「興味」の証明である. 詭弁ですが今回の交流においては許容されるのではなかったかと思います.
 NTUの見学の後,既に17時ごろとなっていましたが, SIMTechに戻って研究棟 (Valley Block) の見学です. ここでは,SIMTechでご活躍されている日本人研究者の方々にご説明いただくことができ, さらに引き続き,ローカルの食事をつまみながら, ものづくりのお話は勿論のこと, シンガポールの歴史やアジアにおける日本の状況についてなど, 貴重な交流の場を設けていただくことになりました.
 火曜日はもう最終日です.この日も朝からSIMTechでプレゼン. 前日よりも多い聴講者で質問も多く, 一歩踏み込んだ内容のディスカッションでさながら国際会議の一セッションといった様相となり, 予定時間をオーバーしてしまうほどでした. 教員の立場からも本交流の意義を再認識させられました.
 午後はSeiko Instruments Singaporeの工場見学です. Managing Director, General Manager各位にご対応いただき, セイコーインスツル株式会社の沿革と製品, 国策との協調などアジアに工場を有するに至った背景, シンガポールで生産している時計ムーブメントの構成部品の生産工程などわかりやすいスライドでご説明いただいた後, その生産ラインに足を踏み入れさせていただきました. 板金成形金型の生産・調整部署から, 精密プレス,熱処理,表面処理,プラスチック射出成形などの工程で各部品が加工され, 精密でありながら高速で組み立てられている様はまさに圧巻で, 異国の地であるからこそ, 日本企業の有する生産技術力が学生により深く伝わった見学となったと思います. 以上で全てのイベントが終了し,荷物を預けているホテルへの移動がてら, マーライオンパーク,ラッフルズプレイス,オーチャードロードを巡って, あっという間の帰国となりました.

 さて,就職難が問題となっている今日では, 学生に寮生活と一年間の海外留学を義務付けている, とある地方大学の輩出する人材に有力企業が軒並み注目しているとのことです (産経新聞2011/1/3, 9, 経済面). 有力企業側からみれば,翻って人材不足ということだそうです. SIMTechは,シンガポールの国力を堅持・向上するために, ものづくり技術の創出を以って国内工業の発展を担わなくてはなりませんから, スタッフには相当な能力が求められます. 毎週金曜の午前中に,エンジニアおよび研究者全員が出席するフォーラムがあります. そこでは,シンガポール国内のものづくり戦略に基づいて研究者が提案し, プロジェクトとして実行してきた最先端の研究について, その進捗状況や成果が報告されます. 専門分野を問わず全員で知識を共有し, 必要とあれば意見を述べる機会が与えられています. また,ほぼ月2回程度のペースで, 各種セミナーや海外の著名な研究者の招聘講演会なども開催されます. これらのイベントを成功させるためには, 個人個人のコミュニケーション能力がひときわ重要で, そしてそれは単に博学であるというだけでは達成できないことではないかと感じます. 加えて,研究者もエンジニアも, 着任して数年後には国内の企業に半年ほど研修に出向く機会があるそうです. これらイベントに参画する動機とそこで共有した興味がコミュニケーションのツールとして働き, 組織を支えているように感じます. 今の日本は,学生に自らのツールが身についていることを強く求めているのではないかと感じます. 自らの研究内容を伝えたいと強く思ってこそ,有意義な交流の場を設けることができるのだと思います.





その他の情報

現在 | 13年度 | 12年度 | 11年度 | 10年度 | 09年度 | 08年度 | 07年度 | 06年度 | 05年度 | 04年度 | 03年度 | 02年度 | 01年度 | 00年度 | それ以前

教育課程

 

卒業生の進路

研究室

関連リンク

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